それではどうして揚力が発生するのでしょうか。アンダーソン氏はコアンダ効果を引用して簡単に揚力を説明してしまいました。コアンダ効果とは流れの中に物体を置いたときにその物体に沿って流れようとする流体の性質を言います。まっすぐに流れる空気の中に翼を置くと翼に沿って空気は流れます。これは空気の粘性と摩擦抵抗の影響です。翼に沿って流れる空気は図のように曲げられます。曲げられるからには空気に何らかの力が働いていると言うことです。その力の方向は流れの接線に直角であり、曲率の中心に向いています。最初に翼との衝突によって空気は曲げられますが、その時に空気に働く力は赤の矢印で示してあります。この力の反力は翼を下げる方向に働きます。その他の黄色い矢印全てはコアンダ効果によって空気に働く力であり、この力の反力が翼を持ち上げる揚力になると言う訳です。
つまり、コアンダ効果よって、空気の流れの進路が変えられ、その進路を変える反力が揚力になるわけです。
従来の理論では、揚力は翼の断面形状つまり翼型に依存しており、上下対象な翼型では揚力が発生しないことになります。また飛行機は背面飛行ができないことになります。でもコアンダ効果が全てを解決したわけです。
翼の上では、上に行くに従って空気は定常に真っ直ぐにながれるようになり、翼から十分離れた地点では翼の影響を全く受けなくなります。真っ直ぐ流れようとする空気と曲げられる空気の関係で空気密度は希薄になり翼の上の圧力が低下します。気圧が低下するためにベルヌーイの定理により空気の流速が増加します。
流れが速くなるから圧力が下がるのではなく、圧力が下がるから空気の流れが速くなるのです。
翼の後縁から離れた空気はダウン・ウォッシュと呼ばれ、地上から見ると、ほとんど垂直に下方に吹き出します。この吹き出す空気の質量とスピードによって揚力が計算できるわけです。